インディーズレーベルの経営者はたいていの場合、音楽のスペシャリストで、メジャーの世界で修羅場をくぐってきた方も少なくありません。
ところがメジャーのレコード会社では経営者は音楽とは無縁であるのが普通です。経営と制作が明確に分かれているのです。つまり経営陣に歌のクオリティを訴えても無意味ということなのです。
メジャーデビューの実質的な権限はプロデューサーにありますが、プロデューサーが説得力のあるプレゼンをするためには、歌が素晴らしいという抽象的な理由ではなく、どのような根拠で利益をあげられるアーティストであるかを示さなくてはならないのです。
アーティストがそこまで意識して活動するのはとてもたいへんですし、もはやアーティストの仕事でもありません。
そこで必要になってくるのが音楽事務所です。抽象的な価値を具体的な価値にして示すことで、レコード会社と交渉ができるようになります。
そして音楽事務所にはもうひとつの裏技があります。それは売れなかった場合の損失を音楽事務所が引き受ける代わりに所属アーティストをデビューさせるというものです。
つまり音楽事務所が経費を支払うことで、レコード会社は確実に利益を出すことができ、売れたらさらに利益を得ることができるということになります。
現在ではレコード会社が新人に予算を出すことは極めて少ないため、メジャーから新人がデビューするには、こうした契約が主流になっています。